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寺脇先生の教育論≪寺脇研先生の教育論≫【第45回】生まれた時から「豊か」でなかった世代の活躍

 アメリカに追従して世界第二の経済大国として繁栄するという二十世紀後半の日本の針路が,もはや行き詰って
いるのは明白です。にもかかわらず,長年浸ってきた経済大国区分から抜けきらないのが,いまの大人たちなのです。
しかも,政治家,官僚,マスコミ,体制側学者・・・といった社会を引っ張っていくべき役割に就いている層ほど,
その傾向が強い。常に景気を良くして経済成長を続けなければならないという思い込みから,いつまでもぬけきれて
いません。これでは,生き方まで含めたこれからの社会の在り方という大きな展望には結びついていきません。

そこへいくと若者は違います。経済大国の恩恵など,ほとんど受けていません。2015年時の大学4年生が生まれたの
は1993年,彼らが物心ついた頃には既にバブルははじけ,日本経済の「失われた○○年」と呼ばれる時代に突入して
いました。デフレ生活の中で育ってきた彼らに,豊かさの実態はないでしょう。
 ここ数年,一部の大学生たちの動きが活発になっていたことは,この本でも何度か紹介してきました。社会の問題
に気づいた学生ほど,何か自分も活動しなければとの思いに駆り立てられています。彼らは,これまでの経済一辺倒
の考え方では幸福になれないと直感的に思っているのです。
 もちろん,彼らは大人に比べれば,未熟で力も足りません。だから,理屈に走るのでなく具体的な活動に取り組み
ます。NPO活動であり,ボランティア活動であり,各大学の枠を越えた学生サークル活動です。それらの活動を通
して,学生たちは実社会とそこに存在する種々の問題に直面するのです。従来の学生のように,何も自分の考えを持
たず器用に進学,就職の道を歩んだなら,就職先で力を持つ大人たちの倫理に組み込まれてしまいます。しかし,自
分で考えて活動した経験を持てば,そんな大人に盲従することなく,自分たちの未来を切り拓けるはずです。
 文部科学省を退官して数年,大学や学生たちの活動の場で彼らと接してきた中で,若者さえ「自ら学び,自ら考え
る」ようになっていけばこの社会の未来は決して暗くないと思うようになったのは,そうした理由です。