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寺脇先生の教育論≪寺脇研先生の教育論≫【第38回】日本の教師はダメじゃない

  日本の先生たちは,決してダメじゃない。

 それを,ダメ教師は去れ,とうそぶき教員免許更新制を強引に導入したのは,第1次安倍政権でした。
当時の安倍首相は本当に教育現場を知っていたのでしょうか。答えは否でしょう。
もちろん,現場に足を運べばいいというものではありません。この社会の中で,皆が仕事を分担している
以上,教師は教師,政治家は政治家,官僚は官僚として全力を尽くすべきです。それを,自分の立場だけ
直接知れと要求するのは,はっきり言って甘えでしかありません。
 ただ学校で実際に働いたり何日も視察したりしなくても,データや意見を集めることによって実情を把握
することは可能です。政策を決定するためには,当然,そうしなければなりません。ところが,あのときの
安倍首相はそれをしなかったのではないでしょうか。「お友だち」の政治家や学者,経済人などから聞き
かじった情報で,ダメ教師が多いと早計に断定してしまったのです。
 
  
 たしかに,日本の教師に全く欠点がないわけではありません。社会常識を疑われても仕方がない場面も
あります。また卒業式入学式の国旗国家問題など,法律を守るという意識に乏しいのも困ったものです。
社会常識や遵法意識は,たしかにないがしろにはできないものの,教師の仕事の根幹部分ではありません。
何より重要なのは,教育という仕事に情熱を持ち,子どもたちのことを真剣に考えていけるかどうかでしょう。
  その点からいえば,圧倒的大多数の教師は条件を満たしています。それどころか,他の職業と比べても,
きわめて士気が高いくらいです。
 九割方の教師は,真面目に仕事をしているのです。それを,日本の教師は質が悪いといわんばかりの言説で
批判する政治家や学者や経済人,そしてマスコミは罪が重い。いまの教師や学校の評判の悪さは,いわば「風
評被害」だとわたしは思っています。餃子から毒物が検出されたら中国製の食品はすべて危険だとされたり,
新型インフルエンザ患者が一人出たらその土地はウィルスでいっぱいだ,と決めつけたりするようなものです。


 人間が一人ひとり違う以上,全員が同じように同じだけの力を発揮することは不可能です。同じひとりの人間
であってさえ,就職したばかりの新米時代とベテランになってからでは力は大きく異なります。また,人生の中
で,自らの身体の調子を壊したり子育てや介護の問題に直面したりしている時期には,自分の持てる全力を出す
余裕がない場合だってあります。それを無視して常に高い能力を要求するのは無理というものです。
 かくいうわたし自身,31年間の文部省・文部科学省勤務の中で,全期間にわたって100%の力量を投入できた
わけではありません。20代の頃は経験や知識も足りなかったし,若さゆえの精神面の未熟さもありました。
30代,40代は力をつけていたと思いますが,それでも上司との相性や仕事のタイミングなどあって,十分に働け
たとは言えない何年かがありました。
 結果として力が発揮できるかどうかは,一概に計れるものではありません。要は,高い士気を持ち,現在の教
育に求められている方向性を外さないことでしょう。