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寺脇先生の教育論≪寺脇研先生の教育論≫【第37回】「教育」論議にとどまらない未来論を

 これから必要なのは、矮小な「教育」議論ではなく、もっと広い視野にたった未来論ではないでしょうか。
学力テストの結果を公表するかどうか、子どもに携帯を持たせるかどうか、道徳教育をどうするかなどとい
うことは個別の教育委員会、学校、家庭で考えればいいことです。地球上に暮らす約70億人の人間がどう
やって平和で安心、安全に暮らしていけるのか、その方途を議論していかねばなりません。
新しい時代に対応する力を身につけてもらうためには、教育の機会はさらに広げていく必要があります。
ただ、それに要する教育費を社会がどのように負担していくかには、新しい考え方があってもいいでしょう。
従来の、可能な限り何でもかんでも公費負担という論理は、国全体の借金が1000兆円を超える赤字財政の下で
到底通用しません。福祉と医療が危ない現在、そして財政状況の好転が見込めないなかで、教育をはじめとす
る他の分野における公的支出はできるだけ抑制しなければなりません。
 
 これはひとつの提案です。小中学校・高校の無償制度はそのままで、大学に関しては「奨学金バウチャー」と
でもいった制度に変えるのです。2006年、第一次安部内閣の教育再生会議などでは小中学校のバウチャー制度
も議論されましたが、それはまったく必要ないでしょう。授業料を必要とする大学以上の教育についてだけバ
ウチャーを、それも将来無利子返還の奨学金という形で行うのです。
 将来返す額のバウチャーを、大学だけでなく専門学校、英会話教室などの民間教育機関などどこでも使って
いいことにします。すべての若者に均等にバウチャー奨学金を受ける権利を保障します。親が豊かだとか、
いまは学習したくないとかいう場合は即座に返還すればいいでしょう。自分の意思で借り、そのお金(バウ
チャー)学んだ結果つけた力で働いて返すということです。

 自己責任で借り、自己責任で返すという仕組みが、社会のために責任を果たす意識を育てもするでしょう。
もちろん、さまざまな事情で返還不能になるケースも出てきます。その際は、福祉的考えに立って返還免除
すればいいのではないでしょうか。全面バウチャーにすることによって、現在の私学助成や公立高校、国立
大学法人などへの直接支出はなくなるのだから、返還免除の財源は現行教育予算より少ない額で済みます。
 自分の教育費用は大人になって自分で返す(負担する)のです。何でも公費で負担すれば個人の負担は少
なく見えますが、それは増税という形で必ずいつか負担しなければならなくなることを忘れてはいけません。