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寺脇先生の教育論≪寺脇研先生の教育論≫【第32回】少人数学級についての「神話」

 1学級あたりの児童生徒数を減らせば教育の質が向上する,という説が昔から通説扱いされており,
近年ますます勢いを増していますが,わたしは,無条件にそうだとは言えないと思います。
 元々少人数学級になる僻地の学校では,学級人数が少なすぎるのでなんとかしてほしいとの声が
上がることが多々ありました。少人数では社会性が育たないとか,生徒間の力関係が固定化される
とかの心配が出てくるのです。学級定数を減らせばよくなる,というのは真理ではなく,少なくなり
すぎるのは必ずしもよくない,というのが事実でしょう。つまり「一学級の人数は多すぎてもいけな
いし少なすぎてもいけない」が正しい。だとすれば,どのくらいの数だと多すぎも少なすぎもしない
のでしょうか。

  学級の理想的な人数は何人か,実は誰もそれをちゃんと論証したことがありません。
現場のベテラン教師によれば,多すぎるのも困るが,少ない人数に授業するのも一人ひとりの反応に
きちんと対処しなければならないため,それはそれで難しいといいます。学ぶ側から見たとき,きめ
細かく指導してもらえるので,学習面では少人数のほうがよさそうです。しかし,学級は学習の場で
あるだけでなく学校生活を営む基本単位でもあります。人数が多いほうがさまざまなタイプのクラス
メートと付き合うことができます。切実なところでは,いじめの発生する度合いを考慮しなければな
りません。多人数のほうが全員で一人をいじめる構図は生まれにくいですし,人間関係も多角化,
多様化して風通しがよくなります。
 また子どもたちに聞くと,先生と気が合わなかったときに少人数のクラスだとつらい,との意見もあ
ります。生徒同士の相性があるように生徒と教師の間も相性があるから,うまくいかないとき少人数の
学級であればあるほど息が詰まるそうです。そんなこんなで,生徒の側は必ずしも少人数学級歓迎とは
限らないようです。


 2011年度から,30年ぶりに学級定数が改善されることになりました。それ自体は喜ばしいことです。
小学校の1年生だけではあるものの,定数基準が40人から35人に改められました。これまで全学年とも
1学級の最大人数40人で学級数を算定し,それに応じた教員数を手当てしていたのですが,小学1年生に
限り最大35人で算定する分教員数が増える、ということです。
 この定員数算定基準改善の眼目は,定員数算定基準を改めた結果生じた教員増分を各自治体,あるいは
各学校が使い方を工夫して効果的に生かし,それぞれの方針で教育条件を改善するところにあります。
小学校英語など特別な教科を担当する専科教員を増やしてもよければ,ティームティーチングや習熟度別
指導の要因を拡充してもいいのです。地域住民の意向に配慮しつつ,地方運圏で各市町村が学校ごとに
教員の効果的運用を考え,独自の配置をしていく……。それが定員改善の結果として期待されているとこ
ろです。