教育関連記事
寺脇先生の教育論≪寺脇研先生の教育論≫【第22回】戦争の反対語は?

 学生に「戦争の反対語は何ですか?」と聞くと,「平和です」と当たり前のように答えが返ってきますが,正解は違います。

評論家・劇作家で有名な福田恆存氏(1912~1994年)は「平和とは『戦争がない』状態にすぎない」,と言い残しています。(著書『日本への遺言』文藝春秋刊,他)

 国と国との争いが戦争なら,確かに平和は争いがない状態をいう言葉です。ただ平和であればいいだけでなく,肝心なのは仲良くすること。喧嘩をすることの反対語は喧嘩をしないことではなく仲良くすること。つまり「文化」とは,他者と仲良くする知恵のことなのです。

 たとえば私が,知らない人の前で下手くそなりに歌を歌ったとします。そうしたら「なーんだ,こんなに下手なのだ」と親しみを感じてくれるでしょう。そうやって人それぞれが違うということを発見していくことが「文化」なのです。違うけれども仲良くしようということを作っていくのが「文化」です。

 

 これからの時代は,もう争いの時代ではありません。今戦争なんかしたら地球が滅びてしまうことを誰もが知っています。争わなくてもみんなでやっていく知恵,そうやって心を一つにして共生していくこと,それが「文化」なのです。

 だから「文化」を尊重できない成熟社会というのは,あり得ません。成熟社会は,戦争という手段や政治力,経済力で問題を解決していかずに,みんなの心で解決していく社会です。ひと握りの指導者が決めるのではなく,みんなの合意が次第に形成されて,環境問題も食料問題も解決していく。たとえば地球の環境を守るために,「みんなで少しずつガマンしよう」ということが大国の論理で決まるのではなく,みんなの共生の精神によって決まる社会。「文化」とは,あらゆるほかの人と共生する知恵の謂である,と私は思っています。