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「学習する空間づくり」③

I先生のアドバイスを踏まえて、次の授業に臨んだ私でしたが、
教室のドアの前まで来ると、突然ビデオで見た一方通行授業をする自分の姿が蘇ってきました。

不安をかき消すために、「こんにちは!」といつも以上に笑顔で元気よく入室しました。
「こんにちは…」 生徒達から返ってくる挨拶はまばらです。
以前の私なら、そのまま見過ごしていたことでしょう。

「挨拶で授業は変わるんだよ」というI先生の言葉を思い出し、
「何か元気がないな。みんな、こんにちは!」ともう一度笑顔で呼びかけました。
「こんにちは…」…あまり変わりません

「もう1回。こんにちは!」笑顔で呼びかけました。
「こんにちは…」…少し大きくなったでしょうか。先ほどより、目が合う生徒が増えました。

「まだまだ、こんにちは!」再び笑顔で呼びかけました。
「こんにちは!」…やれやれという表情を浮かべる生徒も見られましたが、まずまずという挨拶が返ってきました。
クラスの半数の生徒が私のことを見ています。

私を見ている生徒に笑顔で目線を移しながら、教卓の前に立ちました。
「さあ、今日も先生は最高の授業を提供する!いっしょにがんばりましょう!」と大きく力を込めた声で語ると、
「ウシジマどうしたの?」
「さぁ?」と、ざわめいていた生徒も自然と静かになりました。

そして、授業開始の号令。
「起立!」と声を掛けるとバラバラと立ち上がる生徒達。
でも入室時の挨拶の反応よりは良いようです。

一瞬躊躇しましたが気を取り直し、「もう1回やり直そう」と指示して、
「起立!」と号令をやり直しました。
今度は一斉に立ってくれました。

「気を付け!」「気を付けの姿勢は指先ビーンとまっすぐにして体側に付ける!」
自ら模範となるよう意識して、教卓の横に立ちました。

生徒たちが私のことを見ています。今まであまり意識したことがありませんでした。
そして、生徒達を見回すと指先を伸ばして気を付けをしようとしていることが分かって嬉しくなりました。

「そう!いいね!では、元気よく挨拶しよう!」
私の「礼!」という号令に「よろしくお願いします!」と返す生徒たちの挨拶は、これまでの私の授業で一番元気の良いものだったと思いますが、
「声が小さいもう一度!」と思い切って今度もやり直しをさせました。
これまで、生徒の一つひとつの行動を気にしたり、見届けたりということはあまり意識していなかったということがよく分かりました。

「よろしくお願いします!!」
さらに2回ほどやり直させた後着席させた私に、
「なんだかいつもと様子が違うぞ」と生徒達も感じたのでしょう。
いつもかすかに聞こえていたささやきひとつ聞こえません。

I先生の授業で感じた空気に近いものが感じられる(緊張感のある)静かな空間でした。
すかさず、大きな声で出席を取り、一人ひとりの返事を笑顔と全身で受け取りました。返事が小さいとやり直しもさせたのでした。

そして、授業終了の挨拶はビシッと1回で決まりました。
この時は、「何とかよい授業ができたようだ」とホッとしました。


正直なところ校長に「生徒の行動を見なさい」と言われた時は、「見ているのに」と思っていました。I先生に「挨拶で授業が変わる」と言われた時、「挨拶ひとつで何が変わるか」と半信半疑でした。

「お疲れ様でした!」講師室に戻ると校長が笑顔で迎えてくれました。
「授業の様子を廊下越しに見ていたんだよ。」
「授業はいかがでしたか?よくなりましたか?」
「授業内容はまだまだだけれど、この調子でやってくれれば成績を上げられる授業になりそうだね。牛嶋先生が本気になって生徒に接していたから、生徒が本気になっていたんだよ。当たり前のことを当たり前に行うこと、それを続けることが実は一番難しいんだ。でもそのことを信じて実践できる人は伸びる。今日の授業を忘れず続けるんだ。期待しているよ!」

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早稲田アカデミーの講師になって22年。今でも心がけていることは、授業の始まりの挨拶をしっかりと行うことです。授業は一期一会の真剣勝負。礼に始まり礼に終わる。
授業開始の3分間でその日の授業が「学習する空間」となるかどうかが決まるのです。

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