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「学習する空間づくり」①

「生徒がやる気になり、目を輝かせて話を聞く授業」
これを「学習する空間」と表現し、教師力養成塾ではそのノウハウを紹介しています。

具体的な方法論は映像講座の導入編に委ね、ここでは「学習する空間づくり」にまつわる私の昔話をさせて頂きます。

私が早稲田アカデミーに入社したのは1991年10月。今から20年以上前のことです。

入社当時は「楽しくなければ授業じゃない!」「活気あふれる雰囲気こそ授業の醍醐味だ!」と考えていました。
そして、「いかに生徒を楽しませ、授業を盛り上げるか」ということに一生懸命になっていた記憶があります。実際、授業中の生徒の反応も上々だったので、「和気藹々とした授業を生徒も楽しんでくれている!」と自信と手ごたえを感じていました。

そんなある日のこと。校長からこんな言葉を掛けられました。
「牛嶋先生は楽しそうに授業をしているね。でも、あの授業では生徒の成績を上げられないと思うよ。I先生の授業を一度見学するといいね。」

あまりに唐突に自分の授業を否定されたので、腹が立ったことを覚えています。
「校長は私の授業をちゃんと見てくれていない!」
「生徒たちがあんなに楽しそうに受けているのをわかっていない!」
若かりし私は、校長の言葉を受け止めるどころか、反発する気持ちしか持たなかったのでした。

I先生は多くの生徒を第一志望校に受からせてきた校舎で一番のベテラン講師。
「校長の命令だからしょうがない」とふてくされ気分で、私はI先生の授業見学に入りました。

しかし教室に入った瞬間でした。自分の授業とは違う何かを感じたのです。
教室の中の空気が違うのです。何かピリッとしたものが感じられるのです。

I先生の授業は、まず挨拶が違いました。まさに「礼に始まり礼に終わる」、真剣勝負の試合のようでした。
とはいえ、I先生の生徒に接する表情や言葉遣いは決して厳しいものではありません。むしろI先生の表情はいつも講師室で接する時以上に穏やかでした。
その一方で、生徒たちの表情も輝いて凛としているし、後ろから見ていても集中して授業に臨んでいることが分かりました。

I先生が面白いたとえ話で盛り上げているわけでもないのに、生徒が楽しそうに授業を受けていたことに私は衝撃を受けました。こうして「校長は分かっていない」という反発心とその根底にあった自信はあっさり打ち砕かれることとなったのです。

これが「学習する空間」について私が考えるようになったきっかけだったと思います。
しかし、この授業の後、I先生のアドバイスを実践した私はこの時以上のショックを受けることを予想だにしていませんでした。
(つづく)